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突発連載中 海賊SS 3回目です。

ちょっと遅くなったので、18日アップの予定が日付が変わってしまいました。
今、19日の0時16分です(反省)。


そしてまだまだRではありません。

ナミさんが楽しそうです(笑)

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『君が好き。』 3




のんびりと大海原を進むメリー号の甲板。

 心地よい風とあたたかな日差しに包まれているはずのそこで、なぜかまるで雷雲でも背負ったかのような形相で麦わらの船長と元海賊狩りが睨みあっている。
 そこだけ亜空間でも発生させてしまいそうな緊迫した空気に、なんとか場を収めようとなけなしの勇気を振り絞ってルフィにすがっていたウソップの気力も尽き果てたらしい。
 ずるずると甲板に沈み込んだまま死んだふりを始めたウソップにはまるで構わず、ゾロはゆっくりと口を開いた。


「・・・・・もう一度聞く。ダメだってぇなら理由を言え。」
「ダメだったらダメだ!!」
「理由はなんだ!」


 今にも腰の刀に手を掛けそうなゾロの気配に、なんとかウソップを救出しようと恐る恐るその場へと近づいていたチョッパーが毛を逆立てて逃げ出す。
 それでもなんとかウソップを引きずっていくことには成功したらしい。
 甲板を引きずられて擦り傷だらけになりながら、それでも暗雲立ち込める嵐のど真ん中から生還を果たした心境のウソップは小さな船医に礼を言いつつ安堵の涙を流している。

そんなウソップになど欠片も注意を払わないまま、ルフィはゾロに向かって宣言する。


「ダメに決まってんだろっ!サンジは俺のコックだぞ!!俺のメシを作ってくれるんだ!ゾロにはやれねぇっ!!」


 しかし、胸を張ってそう言い切ったルフィに、緊迫していた空気が一気に霧散した。

 甲板に立てられたパラソルの下で成り行きを見守っていたナミとロビンも、「ああそういうこと」と呆れたようにため息をつく。
 それが聞こえたわけでもないだろうが、ゾロも一瞬じっとルフィの目を見てから肩の力を抜くように一つ息を付いた。

 
「コックとしてのアイツをやれねぇってことか。」
「おう、そうだ!サンジは俺が見つけたんだ。俺たちのコックだ!!」


 ふんっと鼻息を荒くして言い切る船長に、ゾロが真剣な顔でうなずいた。


「それは俺も感謝してる。」
「・・・・・ん?」


 首をかしげて問い返すルフィに、ゾロは真剣な眼差しのまま続けた。


「お前がアイツをこの船に連れてきてくれたおかげで、俺はアイツを知ることが出来たんだ。感謝してる。」
「おう。」
「アイツがこの船の全員にとって大切なコックだってのは、俺だって百も承知だ。その上で言ってんだ。あいつを貰いてぇ。」
「ん~~?」
 

 ゾロの言葉にルフィが首をかしげて考え込む。
 

「俺はコックが欲しいんじゃねえ。アイツが欲しいんだ。」
「ん~~~?」


 きっぱりと潔く言い切るゾロだが、どうやらルフィには通じていないらしい。
 かしげる首が床に着くほど伸び始めて、今にもぐるりと円を描きそうだ。


「はいはいはい。ちょっといいかしらね。」


 パンパンっと軽い音を立てて手を叩きながら、ナミが二人に近寄ってきた。
 甲板に座り込んでルフィ相手に談判中のゾロを見下ろすように立ったまま、ナミは呆れたような表情を隠しもしない。


「ゾロ、あんた分かっててやってんのね。」
「何がだ。」
「ルフィには理解できないだろうってことをよ。」
「そんなことはねぇ。」
「あんたがあんたなりに無い頭絞ったのは分かったわ。」


 『ふんっ』と鼻で笑うように言われて、ゾロが眉間にしわを寄せる。
 そんな凶悪にも見える顔に今更ひるむわけも無いナミは、履いていた踵の高いサンダルをぽいぽいっと子供のように脱ぎ捨てると、ゾロとルフィの脇へぺたりと座り込んだ。
 小さな子供のようなそんな仕草に、パラソルの下のチェアに座ったままのロビンが「あらあら」と笑う。


「ま、ルフィはともかくとしても、勝手にサンジくんを自分一人のモノにしようって言うのは、ちょっとずうずうしいんじゃないの?」
「・・・・・・どういう意味だ。」
「だって、ルフィだけじゃなくて他のみんなだってサンジくんが大好きなのよ?もしもサンジくんが自分のモノになったら・・・なんて妄想を嬉しそうに考えちゃうのがあんただけだと思ってんの?バカね。」
「んだとっ?!てめえ、まさかっ・・・!」

 
 ナミのからかいにまんまと乗せられたゾロが、一度は落ち着かせたはずの怒りを再び燃え上がらせそうになる。
 そんな常の彼らしくない様子を見て、ナミはにんまりと楽しげに笑う。


「ほんとバカね。あたしは対象外よ。・・・・・・・・・・・でもね。」
 

 くるっと首をめぐらせて、ナミはいつの間にかロビンの背後に頭半分だけ隠れて様子を伺っていた船医を呼ぶ。
 

「チョッパー、あんただってサンジくん好きよね。」
「えっ、おれ?!」
 

 『おいでおいで』と手招かれて、チョッパーはおずおずと歩いてくる。
 近くまでやってきたチョッパーの帽子をぽんぽんと叩いて、ナミはにこりと笑いかけた。
 

「前に言ってたじゃない。サンジくんと一緒にいると、なんか暖かくて嬉しいって。」
「う、うん。サンジといるの、おれ好きだ。」
「なんか優しくて暖かくて・・・・・なんだっけ?」
「おうっ。サンジって、傍にいるとすごくあったかくていい匂いなんだ!サンジと一緒にいるとおれ、すっごく嬉しい!」
「ね、チョッパー。もしサンジくんがチョッパーのモノになったら、ずーーーっとあったかくていい匂いですっごく嬉しいのよ?」
「ええっ、そうかっ?そうなのか?!」
「そうよ。ねえ、それってすごいと思わない?」
「うん、すげぇ・・・・・・・・・。」

 そそのかされているとも気づかずに、純真なトナカイは真剣に目をキラキラさせて何かを考え始めている。
 その様子を黙ってみているゾロの眉間のしわは、ますます深くなっていた。ナミはもちろん気が付いていて無視だ。

 そして、なんだかやけに楽しそうな様子のナミは、その笑顔を今度はパラソルの下の仲間へと向けた。 



                                                                                                                                    4 へ続く
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