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きっと皆さん書いてるだろうけれど。
でもとてもとてもきれいだったので。

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『真夜中の』



「月蝕なんだって」

 聞きなれないけれど覚えはあるその単語に、サンジはちょっと間を空けて「うん」とか「ああ」の中間みたいな返事を返した。
 

 どこで仕入れてきたというのか、ゾロはどこか得意げな様子で説明を始めている。

「・・・・・・・で、11時過ぎに完全に影に入るって」

 『11時過ぎ』と聞いて、サンジがちょっと眉をしかめる。

 子供は寝る時間だ。

 そう、いつものお小言が口をついて出そうになったその気配を察したのか、ゾロはそのサンジの声を制するように向かい合わせに座ったダイニングテーブルの上に額をつける勢いでがばっと頭を下げた。

「頼む!」
「えー・・・・・・・・・・・だけど、11時過ぎってお前なあ・・・」
「別に『遊んで夜更かし』じゃねえっ!先生だって、せっかくだし見られる人は見てみろって!」
「ナミさんがぁ・・・?」
「あいつは・・・・・・・・・・ナミセンセイは空のこととか詳しいから、色々言ってた。」
「ああ、そうだろうなあ。」

 本来なら小学校の教師ではなく、天文とか気象とかそういう分野の専門家になっててもおかしくないらしいといううわさのゾロの担任である美人で朗らかな若き女性教諭のことを思い出しながら、サンジがふうと息をつく。
 その道の専門家である彼女としては、せっかくの機会だから子供達にもぜひ経験してもらいたい天体ショーなのだろう。

 けれど、その『子供』の保護者もどきを自認しているサンジとしては、まだ小学校4年生のゾロに23時過ぎまで起きていていいというのはなかなか認めにくいことでもあって。

 いろんなことを経験するのはそれはそれで大切なことだということももちろん分かるけれど。
 でもやはり子供には規則正しく身体に良い生活環境を・・・・・・とか、共に暮らす年長者としてサンジは悩む。


 サンジのその様子に、これはもう一押し、とさすがに年齢に関係ない深い付き合いの間柄から気がついたゾロが畳み掛けるように言い募った。

「今日は天気のいい夜になるだろうから、くっきり見えるだろうって。昨日から空気も澄んでるし、雲も多くないからって。そういう時の月蝕は月が太陽と地球に食われたときの色がぜんぜん違うんだって!」

 月が。
 太陽と地球に食われた、って。

 あの美しい担任教師がいくら子供たちをいろんな意味で子ども扱いしない人だからって、そんな表現をしただろうか、とサンジはまたしてもちょっと悩む。
 けれど、ゾロは一歩も引かないという様子で尚も渋るサンジに食い下がった。

「ちょっと見たら、すぐに寝る!」
「あー、でもなあ」
「明日の朝練も、ちゃんと自分で起きて行く!!」
「んー・・・」

 いや、自分で選んで続けている剣道なのだから、学校が休みの日曜の朝練に自分で起き出して行くのって当たり前なんだけど。
 そんな突込みを心に思い浮かべて「うーん」と唸ったまま首を傾げたサンジに、ゾロは奥の手ともいえる一言を繰り出した。

「お前の作ってくれた旨い朝飯も、ちゃんと全部食ってから行くから!」


 ・・・・・・・・・・・なんなの、その殺し文句。


「くそ、このチビマリモのクセに・・・・・。」


 じわっと頬が熱くなるのを感じて、サンジは火をつけないまま唇の先で弄んでいた煙草のフィルターをぐっと歯先で噛み締めた。

 最近、この子供はこんな風にサンジの心の中まであっさりと踏み込むような言葉を口にするようになった。
 わかっててやってるのかとサンジが悩むくらいに、それは直球でサンジの心臓に突っ込んでくる。

 まだまだ小学校のガキのクセに。
 サンジよりも9歳も年下のクセに。

 先が思いやられるって、こういうことなんじゃないの?と歯噛みしたくなる思いをやっとのことで抑えていたサンジに向かって、末恐ろしいお子様はこの夜最大のバクダンを投下して寄越した。

「お前と見たいんだ」
「・・・・・・・・・・は?」
「センセイが言ったんだ。『月って聞いて真っ先に頭に浮かんだ人と一緒に見られたら一番いい』ってよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「俺はお前が一番に浮かんだ」
「あっそ・・・・・」
「だから、一緒に見ようぜ」


 いいだろう、と何の迷いも無い真っ直ぐな金色の目がサンジを捉える。

 ナミさん・・・・・。
 サンジの脳裏に、美しい顔で意味ありげに微笑むゾロの担任教師が浮かんだ。

 なにもかも知られてしまっているようなこのいたたまれなさはなんだいったい。


 「なあ、いいよな?」


 うーうー唸っているサンジの様子に、さすがにちょっと不安そうな声になってゾロが言う。
 ゾロにそんな声で意向を伺われてサンジがイヤと言えるわけが無い。
 さすがにそこまでは分かられてしまってはいないのかと、ちょっとほっとしてサンジはふうっと息を付くと向かいの椅子に座って身を乗り出している子供を見つめた。

 「・・・・・・・・・・お前にとって、俺は『月』なの・・・?」
 

 呟くように問いかけたサンジに、ゾロはあっさりとうなずいた。

 「おう。」
 「・・・・・・・・・なんで」
 「なんでって・・・・、月みたいだろ、おまえ」
 「・・・・・・・・・だからどこがだよ」
 「どこって・・・・・きらきらしてっし。くるくる形が変わるとことか・・・?」

 『あっそ・・・』と呟いて、自分から話を向けておきながらあまりの恥ずかしさにそれこそ居たたまれなくなったサンジがその会話を打ち切ろうとしたのに、ゾロは『あ、』と何かを思い出したというように唐突に声を上げた。

 「・・・・・・・・・・んだよ」

 なんとなくイヤな予感がしつつもサンジが先を促す。
 すると、ゾロはじっとサンジを見ながらはっきりと言ったのだった。

 「俺は『太陽』か『地球』になる」
 「・・・・・・・・・・・・・・は?!」
 「ナミが教えてくれたんだ。俺がどうしたらいいのかって言ったら、『相手にとっての太陽か地球になれるくらいがんばれ』ってよ」

 意味はよくわかんねーけど、とゾロは何の迷いも無い笑顔をにかっと浮かべてサンジを見た。

 
 「意味はわかんなかったけどよ、俺もそれでいい気がすんだ」

 

 ナミさんっ!
  こんなお子様にいったい何を教えてくれちゃってんの?!
 ってか、お前はナミさんにいったい何を相談してくれちゃってんだ!!!

 「だから、俺はお前にとっての『太陽』か『地球』になるんだ。分かったか?」


 わかんない、わかんないからっ!!


  必死に心の中で叫ぶサンジにはお構いなく、やっぱり末恐ろしいお子様はがたんと椅子から立ち上がると、月蝕観測の準備をするといってダイニングを出て行った。

 
 まだ起きてていいなんて一言もいってねーのに。

 そんなことをぶつぶつと呟きながら、でもそんなことを言ったところで自分はきっとあのお子様と一緒に月蝕を見ちゃうんだろうなあとサンジは諦めにも似たため息を付いたのだった。


 暖かいココアでもポットに作っておいてやろう、なんてことを考えながら時計を見る。


 月蝕が始まるまで、あと2時間ちょっとだ。






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すみません、なんか月蝕を見ながら、
やっぱり離れた場所で月を見ていた大切な友達のツイートとか見てたら、
なんかいろいろ萌え萌えしちゃったので。

しかし、なんだこの設定・・・・・・。
突然沸いて出た設定なので、なんかいろいろ説明口調だし、その割りに説明足りないしで、すみませんがいっぱいです。
ほんとすみません。

また書く・・・・・かな、どうかな。

年下ゾロの天然猛アタックにグラグラしてる年上サンジが書きたかったんですー。


 







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